
諸国を経て下野国を訪れた現八は、庚申山山中にて妖猫と対峙し、弓をもって妖猫の左目を射る。山中で会った亡霊は赤岩一角を名乗り、自らを殺した妖猫が「赤岩一角」に成り代わっていることを告げる。麓の返璧(たまがえし)の里に一角の実子・犬村角太郎の草庵を訪って語らう。角太郎の妻・雛衣の腹は身に覚えのない懐妊の模様を示しており、角太郎は不義とみなして雛衣を離縁、自らは返璧の庵に蟄居していた。
偽赤岩一角(実は妖猫)は、後妻に納まっていた船虫とともに角太郎を訪れ、雛衣を復縁をさせたが、これは偽一角が目の治療のために孕み子の肝とその母の心臓とを要求するためのものであった。孝心に迫られて窮した角太郎を救い、みずからの潔白を明かすために割腹した雛衣の胎内からは、かつて誤飲した珠が飛び出して偽一角を撃った。角太郎は現八と共に、正体を現した妖猫を退治し、名を大角と改めて犬士の一人に加わる。